スコトーマの原理で「明日どんな世界を見たいですか」を問う

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この記事では、スコトーマについて、解説していきます。コーチングでは「スコトーマ」は重要な概念になります。「スコトーマとはなにか」「スコトーマの原理によってどういったことが起こるのか」などについて書いていきます。

医学用語の「スコトーマ」から心理学用語の「スコトーマ」へ

スコトーマは日本語では「盲点」といいます。もともと、眼科の医学用語で使われてきました。

視覚情報は光を電気信号に変換し脳で処理します。光受容体は、中央部に多く周縁部になるほど少なくなり、全く存在しない部分もあります。(網膜内の血管の集合点)

健康な人であっても、光受容体が存在しないために電気信号が得られない部分があります。また、怪我であったり、病気であったり、年齢を重ねると眼球の視神経の中で、映像を映らない部分ができてくることがあります。こういった、眼科の用語で、神経が映像の情報を取りそこねた部分を盲点(スコトーマ)といいます。

僕たちは、目はキョロキョロ動かして生活しています。脳を一時的に記憶するデータもあるので、スコトーマは情報処理上は問題ありません。

こういった眼科の医学用語で使われてきた用語を心理学用語で「スコトーマ」(心理的盲点)と呼ぶようになりました。この心理学用語としての「スコトーマ」は、1970年代からコーチングの大家であるルータイスを使い続けていました。

このスコトーマは、コーチングでは重要な概念となります

心理学用語としての「スコトーマ」は、「本来はあるのに消えてしまっている情報」のことです。僕たちの無意識は重要だと思っていること以外は落とすのという傾向があります。

脳のシミュレーションを考える

スコトーマについては、情報処理の話でもあります。

誰が数えたか分かりませんが、人間の脳細胞(ニューロン)は、160億個あると言われています。その細胞と細胞が枝が張り合ってつながっているポイントをシナプスといいます。

つながりのシナプスは、1脳細胞あたり数千あります。単純な計算をしてみると、160億×数千で100兆です。100兆のニューラルコネクションがあるということです。

脳神経の情報の入出力は、「ほんの少し情報が入ると鈍感ですが、ある程度の情報になる敏感になり、さらに情報量が増すと鈍感になる」といった構造をしています。感受性はこういった「鈍感→敏感→鈍感」のようなS字曲線(シグモイド曲線)を描くのです。

そして、1シナプスあたりS字(シグモイド)のレベルがあります。つまり、「どのくらい強くつながっているか」ということです。非線形な曲線でありながら、「どれくらい信号を増幅されるか」というつながりの強さという関数が数学的には定義できます。

仮に、僕たちが脳のシミュレーションをするときは、「100兆次元の偏微分方程式を解けばいい」ことになります。これは事実上、不可能と言っていいでしょう。

脳がフル稼働できないことがスコトーマの原理を発明させた

人間の脳に関して、何かがある(入力がある)ごとに、いちいち100兆次元の偏微分方程式を解いていたあら、餓死をすることになるでしょう。

どういうことかというと、僕たち人間の脳はかなり進化していますが、消化器は進化していないということです。

もし、脳がフル稼働したとすると、とてつもないエネルギーを使うことになります。人間の消化器は、それほどのエネルギーを供給することができないのです。(それでも、人間のエネルギーの半分は脳で消費し、どの臓器よりもエネルギーを使っています)

つまり、 脳はフル稼働していないのです。

こういった人間の進化の過程で発明したものが「スコトーマの原理」になります。人間は、 重要なもの以外は情報処理しないということです。

情報処理しない方法の一つは、「知っているものは見ない」です。「知っているものは見ない」というのは、一度でも人の顔見ると、二度とその人の顔を見ないということです。あとは、見た気になっているだけなのです。

新しいことは学びますが、過去に見たものは学ばないのです。しかし、新しくなくても変化が起こりつつあるものは新しくなる可能性があるため、見ておく必要があります。つまり 、要注意なことに対しては情報処理をしますが、それ以外のことに関しては、情報処理しないということです。

僕たちは、「そのとき重要だと思っていることしか見ていない」のです。

スコトーマの原理:誰の言葉に耳を傾けますか

これは、権威の言うことを聞くと「本当に重要な情報を見落とす」ということになります。

親や学校の先生の言うことを聞いて、「君は将来○○になるのがふさわしい」という言葉に耳を傾けると、自分が本当にふさわしいと思っていることが分からなくなり、見えなくなります。自分の本当にやりたいことが見えなくなってしまうのです。

人の言うことに耳を傾けた瞬間に、「自分にとって重要なこと」が、「自分以外の人が重要なこと」に変わるのです。

つまり、見える世界が変わってしまうという恐ろしいことでもあります。たくさんのことが見えていないということです。

ここで、スコトーマの原理の例を見ましょう。

夫婦の間で赤ちゃんが生まれたとします。お父さんとお母さんの間に赤ちゃんが入り、川の字で寝ていたとしましょう。

夜中に赤ちゃんが「ギャーギャー」と泣き出したとき、お母さんはパッと目が覚めます。お父さんは熟睡したままです。これは、お父さんが赤ちゃんの泣き声が聞こえないわけではありません。赤ちゃんを泣き止ますのは「お母さんの仕事であり、自分の仕事ではない」という自分の役割ではないと思うと、聞こえなくなるということです。

重要性というのは、自分にとっての役割の重要性でもあります。

お母さんがいなくなったとき、夜中に赤ちゃんが泣くと、お父さんは、パッと目が覚めるようになります。役割が変わったからです。

これがスコトーマの原理であり、 永続的に何がスコトーマになると決まっているわけではなく、そのときそのときでダイナミックに変わります。自分の社会にとっての役割によって変わっていきます。そして、多くの情報は外から入ってきます。

スコトーマの原理を知った上でどうすればいいか

では、自分が「こうなりたい」という生活をしたいと思ったときに、どうすればいいでしょうか。

もし、ゴールを現状の中に設定されている場合を考えましょう。「現状」というのは、「今見えているもの」です。「今見えているもの」というのは、「今までの自分が重要だと思ってきたもの」です。

「今までの自分が重要だと思ってきたもの」を見るということは、見た気になっているだけです。昨日までの見てきたもので今日があり、今日見たもので明日があるということです。明後日はどうなるでしょう。

これは、「未来がいりますか?」という話でもあります。

リタイアした人の平均寿命は、1年6ヶ月というアメリカのデータもあります。リタイアというのは、ゴールを達成した場合と、ゴールを諦めた場合があります。リタイアしたということは、現状を維持すればいいということです。

リタイアする前は、「ああなりたい」「こうなりたい」というゴールがあったはずです。リタイアするとゴールがなくなります。リタイアすると、昨日までの自分が見た世界でいいのです。これは、明日がいらなくなることでもあります。リタイアすると、1年6ヶ月で死んでしまうというデータと整合性がとれます。

このように、長生きするためにも、人間はゴールを持つ必要があることが分かります。もちろん、ゴールを持たなければ毎日同じものしか見えないという、本当に明日がいらない生活になってしまいます。

「現状の外にゴールを設定する」のはスコトーマの原理そのものです。現状の中にゴールを設定するゴールは、意味のないものになるからです。それは、「見えないから」です。なりたい自分になりようがないのです。単に、昨日と同じものを探すだけです。

では、ゴールを現状の外に設定するとどうなるでしょう。

「自分がほしいもの」=「自分にとって重要なもの」です。自分が欲しいものを現状の外に設定した瞬間に、昨日までの風景では足りなくなります。重要なものは、今まで見ていないものになるからです。

今まで重要でなかったものが重要なものに変わる瞬間

  • 男性は奥さんが妊娠すると、街に妊婦さんがたくさんいることに気が付きます。
  • 赤ちゃんが生まれると、街に赤ちゃんがたくさんいることに気が付きます。
  • そして、ベビーカーの必要性が生まれると、街中にベビーカーがあることに気が付きます。

奥さんが妊娠するまでは、ベビーカーの存在さえ認識していないですし、赤ちゃんが生まれ、ベビーカーの必要性に駆られると、たくさんのベビーカーが見えてきて、売っている店やベビーカーの細かい機能まで見えるようになるのです。

これらは、ゴールを設定したからです。ゴールを設定することによって見えてくる→ゴールがないと見えないのです。ただし、ゴールを現状の内側だと、脳は見ません。昨日の自分と同じ自分で良ければゴールを設定しても「過去に見ました」で終了です。
ゴールの現状の中では何も見えないのです。そして、1年6ヶ月で死んでしまいます。

ゴールを現状の外側に設定した瞬間に重要なことが変わります。昨日までの自分が重要だと思っていなかったものが今日重要なものに変わるということです。

まとめ:インベントオンザウェイ

ゴールを現状の外に設定すると、ゴールを達成するためにが必要な情報はありとあらゆるところに溢れていることが見えてきます。そして毎日自分に語りかけてくるようなイメージです。今まで、重要なものだと思っていなかったから見えていなかっただけなのです。

そして、見えたら掴みにいけばいいでしょう。欲しいものをゴールに設定しているのだから掴むことができるはずです。

「どうやってゴールを達成するんですか?」

という質問に対するスコトーマの原理による回答は、
「ゴールを現状の外に設定した瞬間それまで見えなかったゴールの達成の仕方が見えるので、あとは掴むだけです」
になります。

Invent on the way
(やりながら発明する)

現状の外にゴールを設定した上で、「Invent on the way」です。

現状の内側ではやり方が分かります。ステップバイステップではダメなのです。どうやって達成するか達成の方法まで見えないことが現状の外のゴールです。しかし、ゴールを設定することによって、やり方が突然見えてきます。そして、それを捕まえる。やり方は、そのとき思いつく。なので、「Invent on the way」なのです。

そこには、なんのカラクリもありません。脳のカラクリが勝手に見せてくれます。その結果、どうやって達成するかもそのとき思いつくのです。それが人間のクリエイティビティです。

人間の本当のクリエイティビティの源は、現状の外で生まれてきます。

地球をいいところにしましょう。

 

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